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2008.01/09 [Wed]
かわいいね。/「女は二度生まれる」

若尾文子さんことあやや主演作品では初の
まったり系。「女は二度生まれる」です。
お話は。靖国神社の近くに暮らす芸無し芸者、小えんちゃんは
今日も今日とて御客様のお相手をしておりました。
板前さん(フランキー堺さん!)、遊び人、建築家(山村聡さん)、
数々の男性と一緒に過ごす日々。そんな中、お風呂帰りによく会う
大学生にちょっと恋してしまって…。
とにかく。あやや演じる小えんちゃんは人良過ぎです。
可愛いにも程がある!!!芸無し芸者なので、悪く言えば
売春くらいしかする事が無いのですが、小えんちゃんは
普通に「この人いいひとだなー。」ってだけで本能的に
なーんも悩む事無く付き合ってしまったり愛人になってしまったり。
とはいえ、そんな生活にも支障が出て来てからが面白くなります。
建築家のおっさんの嫁と大喧嘩したり、大学生との束の間のお喋りで
ときめいてしまったり、年下の男の子と成り行きで旅行へ出かけたり。
でも、小えんちゃんは果たして幸せだったのかなあ。幾ら頑張って
尽くしてみたりお付き合いしても結局皆自分のもとからは
通り過ぎて行ってしまう…。小えんちゃんはバカなのか頭いいのかが
いまいちハッキリしないというか、本人何の自覚も無いので
「私、これでいいのかしら??」とふと立ち止まる事もあんまり
しないんですね。ホステスやってみたり芸者へ逆戻りしたりと
結構行き当たりばったり的な浮き草稼業を生きているせいか、
小えんちゃんは良くも悪くも何も振り返らない。その時々で
一番自分が心地よい生活してるような感じに思えます…が。
小えんちゃんが思うほど現実甘くなく、「普通」かというと
そうでもなく。ときめいていた大学生にはあまりにあんまりな
仕打ち受けたりしてそこはかとなく実はやるせなかったひとりの女の
生、というものが浮き彫りになっています。川島雄三監督は
本作を撮るにあたり、「若尾文子を女にしてみせる!」と
断言したそうですがそれは大成功だと思います。
女の子というか、女ってそこはかとなくやるせなかったり、
可愛かったり、良いも悪いも本人の知らないところで
自分の運命を悟ってしまったりするところが多分にありますもの。
小えんちゃんはとーっても素直で、とーっても気が強くて、
とーってもお人よし。どんな男も大概コロッと転んでしまうような
オーラがあります。またそれを意図的にダシにするようなところも
皆無。ごくごく普通に出会った男性たちを好いてあげる。好きになる。
なのに、皆通り過ぎてしまう事にやっぱり無自覚だったせいか、彼女の生活の切なさとか彼女の生活のしぶとさが余計に目立っちゃって
観終わった後ひたひた「かわいい事とやるせない事は紙一重なの??」としんみりしてしまいました。駅舎でひとり、たたずむ小えんちゃん。
その表情と仕草は振り返らない女がふと、振り返るのではなくて
「立ち止まってみる」作業を初めて行ったかのような陰翳と初々しさが
満ちあふれていて、ここで不思議なタイトルが生きて来ます。
「幸せにしてもらう」じゃなくて「幸せになる」事への第一歩を
今踏み出そうとしている女の子。そこには当然一抹の不安と寂しさと
希望があります。それを見事表現し切ったあややは女の鑑。
男の人はいいものだけれど、そうじゃないし、今までの生活も実は
自分が考えてたほどお気楽なものでもなかったのかしら、って。でも、
小えんちゃんは自分の力で幸せになる事をきっとこの先、またまた
素直で可愛くてのびのびとしたまんま、ゲットする事が出来るのかも?
と思えました。なのに観た感触は実にビターでほろ苦いのです。
切ない、と言っても良いです。思えば女の子は皆、小えんちゃん。
誰かを通して自分を見る生き物(これは男もそうですが)。
好きになって、そして好かれたひとたちに感謝もすれば
ただ忘れてしまったりもします。忘れたいと思う事だってあります。
その気持ちの細やかなひだを川島雄三監督は見事映像化してますねー。
女が主人公の映画って、男が主人公の映画以上に他人事でない気持ちで
観てしまって延々と考えてしまう事が多いのですが、この映画は
久しぶりにとうとうと考えさせられてしまいました。
女の幸せって、女の過去って、女の一人歩きって、女の辛さって、
女の哀しみって、女の喜びって、女の怒りって、何だろう。と…。
ただ、主人公小えんちゃんは過去も未来も無く、ひたすら
「今わたしはここにいる」という皮膚感覚が自分の体にしっかり
刻み込まれているし、実際刻み込むしか成す術の無い女の子。
そこが可愛いんですよね。嫌な事ってあったかしら、楽しい事も
あったのかしら、と思ってはみてもそんな考えにどっぷりハマって
ドツボに陥る事は恐らく無いであろう女の子。時々危なっかしくて
「うわー、それバカだよ〜」とか思ってしまいますがそれでも
ギリギリラインで踏み止まってる可愛げがある女の子。そこだけは
踏み止まってる女の子。彼女だって「あの時ああすればこうすれば」
という気持ちは幾らでもあったはずですが無常感はあっても
悲壮感がありません。こんな女の子って、やっぱり可愛いなあ。
日々生きていくだけで精一杯だったかもしれないのに、これからも
そうなるかもしれないのに、ちょっともの思いに佇んでみる。
自分の行く先なんて解るわけないのに、解りたくも無いのに、
切ない気持ちになってみる。そして目まぐるしい日々だけ、彼女の前を
通り過ぎて行く…。こんな苦い思いもあって、女は二度生まれる、
のでしょうか???だとしたら私はまだまだ青二才。
小えんちゃんみたいに可愛くないです…。
それと、ヴィジュアル面でも女心と何とやら、と言うように
あややの衣装がコロコロ変わるので、目にも優しく楽しいですよ。
そういえば、この映画を観て色々考えた末、気持ちが落ち着いたのは
この映画が切ないながらも、苦いながらも、無常ながらも、
それでも優しかったから、かなぁ…。可愛いって、大変です。
小えんちゃんはきっと幸せになって欲しい!!って思えます。
ただ傍から見て「バカだなあ〜」だけじゃ終わって欲しくないよなー、
とも思えました。ざまーみろとか思えないんですよね…。
複雑で、可愛いのが女の子なのかしら。結局のところ。
- at 17:31
- [まったりと、しみじみと。]
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